ジャズ(Jazz)名曲まとめ1920年代

第1次世界大戦も終わり、好景気に沸くアメリカ。その一方で1920年からは「禁酒法」が施行され、都市には闇バーができ、それを取り仕切るギャングたちの力が強まっていった時代でもありました。特に有名なのが、シカゴを根城にしていたアル・カポネです(彼を題材にした映画は姉妹サイト「映画知ろう人」で紹介しています)。

そんな時代のジャズはどのようなものであったかというと、すでに商業的な側面が強くなっており、レコードなどの技術発展によってますます大量消費される音楽ジャンルに変貌しました。派手になったエンターテインメント業界に呼応するかのように、「ビッグバンド」と呼ばれる、大人数での演奏がブームになりました。

  Chicago(シカゴ)

Chicago

20年代を体現するようなこの曲は、1922年にフレッド・フィッシャーによって作詞作曲されました。歌詞の内容はとにかく「シカゴ賛歌」といったところでしょうか。しかし当時ギャングが支配する街をあえてこのように歌ったのだとも解釈できます。1957年にフランク・シナトラが歌ったバージョンが有名です(ちなみにシナトラも裏社会との癒着が噂されており、ある意味この点も皮肉に思えてきます)。
  The Man I Love(私の彼氏)

The Man I Love

アイラ(詞)とジョージ(曲)のガーシュウィン兄弟が1924年に作った、ミュージカル用の楽曲です。
ところが、そのミュージカル「レディー・ビー・グッド」の本編が長すぎ・地味すぎという理由で公演まで至らず、そのあともいくつかの劇中に入れようとしても有名にならず、と曲自体もなかなか日の目を見なかったのですが、ガーシュウィン兄弟のレコード会社への売り込みによって1928年にようやくヒットしました。
その頃訪米していたイギリス人が兄弟から楽譜を受け取ったことをきっかけに、同年にはロンドンやパリでもヒットするという、努力(というより執念?)が実りグローバルな知名度を獲得した曲です。また、作者がレコード会社と一緒になって売り込むという商業的なヒットの作り方も、この頃は一般的になりつつありました。
 

Tea For Two(2人でお茶を)

Tea for Two

もともとは歌詞はなく、後付けされたものです。ですが、作曲者が持ち込んだこの曲を聴いた作詞者は、なんとわずか5分で詞を書き上げたというエピソードが残っています。タイトルのとおり、お茶を飲みながら幸せな生活を過ごすという、ほのぼのとした内容の作品となっていて、ミュージカル「ノーノー・ナネット」の公演で使われヒットました。

日本ではCMで使われることがよくあり、最近は2019年にお茶のCM(とはいっても紅茶ではなくキリン「生茶」のCMですが…)で高橋一生さんと森山直太朗さんの2人が共演したことでもちょっと話題になりました。

こちらがそのCMです。歌詞は出ずに森山さんはハミングのみですが、メロディーは聴き覚えがある!という方も多いのではないでしょうか?

 

My Blue Heaven(私の青空)

マイ・ブルー・ヘブン

1927年にヒットしたポピュラーソング。

日本語訳では「~青空」としていますが、夕方に家路についているところで、至福の我が家を楽しみにしている様子と家族の暖かさを歌っています。アメリカだとクリスマス・ソングなんかでもよく言われますが、こうして自分の家や家族を最も大切に思うというメッセージが込められた名曲が多いですよね。

 

I Can't Give You Anything But Love(捧げるのは愛のみ)

I Can't Give You Anything But Love

愛だけはたくさんあげられる。昨今の現実的なカップルではあまり聞かないような純粋な気持ちが歌詞に込められているだけと思いきや、この曲ができたきっかけとなったエピソードがあります。

作詞をしたドロシー・フィールズと作曲をしたジミー・マクヒューがニューヨーク5番街を歩いていたときのこと。貴金属で有名な「ティファニー」の店の前でショーウィンドウをのぞき込むカップルがいました。カップルの男のほうが「僕は君にあれを買ってあげたい。でも今はだめだ、何もあげられない。だけど愛はあげられるよ。」と言っていたのが聞こえ、それをアイディアに曲を作り上げたのだそうです。つまり、「お金がなくても愛はあげられる」というささやかながらどこか寂しさも感じられる内容だったわけです。

ちなみにこれが発表されたのは1928年。翌1929年にはこのニューヨークから世界恐慌が始まりました。皮肉にも曲がヒットしましたが、実際にこの曲のシチュエーションどおりのカップルがたくさんいたのだと思います。

 

Stardust(スターダスト)

Stardust--the Rare Television Performances (2-cd Set)

現在に至るまでジャズのスタンダードナンバーとして、アメリカでは特に年配層に根強い人気があります。昔別れてしまった恋人を思い出しながら、過去そのものを懐かしみ、また哀愁も漂う名曲です。作曲者であるホーギー・カーマイケルは、大学時代に付き合っていた女性のことを夜空を見ながら思い出していたときに、この曲のメロディーが浮かんできたとのことです。それを踏まえると、思い出がある程度過去のものとなった(=年を重ねれば重ねる)ほどに、この歌詞の重みが響いてくるのかもしれませんね。

ナット・キング・コールが歌ったバージョンが名盤と言われていて、彼の娘で同じく歌手となったナタリーも、のちに歌っています。